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第8回 分子細胞生物機構論専攻 分子生物学分野
オートファジーの仕組みと役割を理解する
オートファジーは細胞内成分を分解する仕組みの1つであり、私たちの体の中で常に起こっている生命現象です。近年、オートファジーは飢餓適応、細胞内品質管理などのさまざまな役割を担うことが分かってきており、その破たんは神経変性疾患、腫瘍など多様な疾患と関連することが報告されています。私たちは、オートファジーの仕組みと体の中での役割の理解に取り組んでいます。オートファジーは、2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象となった研究テーマです。
オートファジーとは
細胞内ではタンパク質などの生体成分の合成と分解が繰り返されることで、細胞の機能や健康が維持されています。この細胞内の分解を担うシステムの1つがオートファジーです。オートファジーはオートファゴソームと呼ばれる二重膜構造で細胞質の一部を取り囲み、その後リソソーム(様々な分解酵素を含む小器官)と融合することで内容物を分解します。
オートファジーの分子機構
オートファジーの分子機構の解明に取り組んでいます。オートファジーの実行には、約20種類のタンパク質が働いています。
生体内でオートファジーを検出・定量する
オートファジーの役割を調べるには、いつどこでオートファジーが起こっているのかを「見る」ことが大切です。私たちは、オートファジーの活性を検出し定量する方法の開発・改良に取り組んでいます。オートファジーの活性を測ることができれば、オートファジーの役割や病気との関連を予想することもできます。また、薬の探索にも利用することができます。
(1)オートファゴソーム可視化マウス
(2)オートファジー活性測定マウス
(3)オートファジー活性制御薬の探索
生体内でのオートファジーの役割を知る
オートファジーは私たちの体の中でいつも起こっていますが、私たちの健康にとってどのように大事なのでしょうか?私たちは、オートファジーに必要な遺伝子(Atg5など)を破壊してオートファジーを起こせなくなったマウスを解析することで、オートファジーの生理機能を調べています。
役割1 栄養供給に働く
絶食などのストレス時に、オートファジーは著しく活性化されます。このときのオートファジーは、いまあるものを分解することで、絶食などの非常事態を乗り切るために必要な生体成分を作る材料を細胞に提供します。出生に伴う飢餓への応答や受精卵の生存に重要です。
役割2 細胞内の掃除に働く
普段もオートファジーは常に少しずつ起こっています。このときのオートファジーは少しずつ細胞内成分を分解することで細胞内の「掃除」に働きます。掃除の働きが滞ると、細胞内にタンパク質凝集体(ゴミ)が溜まったり、腫瘍形成を引き起こします。