館長あいさつ

大江和彦 博物館長

医学部・医学部附属病院は、安政5年(1858年)5月7日に「神田お玉ヶ池種痘所」設立に起源を発します。以来、江戸から明治への近代化、太平洋戦争と戦後という大きな時代の移り変わりの中で名称と所在を変遷させ、平成21年に創立150周年を迎えました。これも東京大学、医学部・医学部附属病院に期待し、支援していただいた皆様と、それに応えた先人の努力の賜です。

50年前の創立100周年時には、この建物である医学部総合中央館(医学図書館)の建設が記念事業として立案されました。今回、創立150周年迎えるにあたり、私共は記念事業のテーマとして「社会に開かれた医学・医療の展開」を掲げました。「健康と医学の博物館」の創設は、その一つの柱です。幸いにも、多くの方からこの構想にご賛同とご寄付をいただき、当館は平成23年(2011年)1月20日に開館いたしました。

近年、医学を含む科学と社会との関係があらためて注目されています。科学に携わる者による一般への説明が必須であるという共通認識がある一方で、さまざまな説明方法が試行錯誤されています。このような活動の目指すところが、将来的に理科離れの抑止、人類の知的発展、産業化への結びつきなど、社会にどのような意義をもたらすのかは様子を見なければなりません。今後も科学者側の努力が求められると共に、時々に応じた合意形成が図られてゆくものだと思います。

こと医学に話を限れば、研究のいずれかの段階で一般の協力が必須です。これは医学研究をその他の研究分野と明確に分ける点であり、研究者は医学研究への理解を促進する活動に携わらなければなりません。さらに生命の尊厳、医療人との信頼関係の醸成、社会制度の構築など、医学・医療における一般社会との相互理解と対話の必要性はより高いものがあります。

これらを背景とし、社会と医学・医療に携わる者のコミュニケーションの触媒の一つとして、私共は博物館という形態を選択しました。当館の目的は4つありますが、はじめに(1)一般への健康・医学情報の提供、(2)医学生や医療社会福祉系学校の学生などの教育の2つの目標に最初に取り組みます。近い将来には、(3)史料と器械・技術を通した医学・医療史の研究、(4)貴重な医学史料と器械等の保存と調査、も手掛けたいと考えています。展示スペースは常設展と企画展の2つに分けましたが、企画展では医学・医療に関するトピック形式の展示を行います。手法としては、映像史料、レクチャーの併用、体験型等の展示などの多様な方法を用い、来館者の皆様の理解を少しでも促進したいと考えています。

本館の開館は、東京大学医学部・医学部附属病院の創立から152年目の新しい挑戦です。この活動は、私共からの情報発信を受け取った社会が反応し、よりよい社会を構築できた時に意味を成す、極めて相互依存性が強いものです。創立200年目の時に当館を拠点とした活動が成功裡におわったと評価されるよう、教職員、関係者一同取り組みます。「健康と医学の博物館」をどうぞよろしくお願い申し上げます。

2011年1月20日
健康と医学の博物館 館長
大江 和彦

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